中国ファストファッションSHEIN NY上場のうわさが再浮上
Photo by David M. Benett/Dave Benett/Getty Images for SHEIN
英ロイター通信は先日、ウルトラファストファッションを提供する中国の小売企業シーイン(SHEIN)がニューヨーク証券取引所に今年上場する計画を再検討していると報じた。 ロイター通信の複数の情報筋は、同社創業者である許仰天(クリス・シュー)最高経営責任者(CEO)が、海外での新規株式公開(IPO)について中国で提案中の規則の厳格化を回避するため市民権の変更を考えていることを示唆した。 同社がニューヨーク証券取引所への上場からどれほどの資金を集めようとしているのかは不明だ。しかし筆者は夏に、同社が近い将来上場のための目論見書を提出する見込みで、約500億ドル(約5兆8000億円)規模のIPOを準備していると報告した。 シーインの広報担当者は当時、中国の投資界で口づてに伝わっていたこのうわさを全面的に否定した。しかし今回のIPOが実現すれば、昨年7月に規制当局がこうした上場の監視強化に踏み切って以来、中国企業による米国での初の大きな株式取引となる。 シーインが米国でのIPOを見据えて初めて準備を始めたのは約2年前だが、米中の貿易分野における緊張の高まりにより市場の変動が激しくなったことを受け、計画は棚上げにされたと考えられている。 シーインの広報担当者は今回のニュースに関し、上場の計画はないとロイター通信に告げた。 ■海外IPOを取り締まる中国 中国のサイバー空間の管理と海外での上場申請については今後、中国の証券規制当局が最終決定を下すことになっているが、実施が決まれば中国企業の米国における上場のプロセスはより複雑化・長期化するだろう。 海外での上場に関して証券規制当局が現在提案している規則では、最高幹部の過半数が中国市民か中国に居住している会社、あるいは主な事業活動が中国で行なわれている企業を対象としたものだ。 シーインの創業者である許がシンガポールの市民権を取得すれば、海外でのIPOを行うまでのプロセスがより楽になる可能性がある。 シーインはファストファッションの逸材的存在で、世界中の多くの倉庫から150以上の国や地域に出荷している。新型コロナウイルス感染症の流行中にオンラインへの移行が進んだことを受け、同社は2021年に約157億ドル(約1兆8000億円)を売り上げたと考えられている。2020年の売り上げは約100億ドル(約1兆2000億円)だった。
ジェネレーションZに注力し成長
売り上げの急増により、シーインの評価額は毎年劇的に伸びている。同社は2019年1月、約50億ドル(約5800億円)の評価額でセコイア・キャピタル・チャイナとタイガー・グローバル(Tiger Global)から5億ドル(約580億円)を調達した。 また2020年8月には、新規資金調達ラウンドで評論家らは評価額を150億ドル(約1兆7000億円)近くと推定した。現在では、500億ドル(約5兆8000億円)ほどの価値があるかもしれない。 ■ジェネレーションZに愛されるブランド 南京を拠点とするシーインは2008年に創業され、ジェネレーションZ世代の顧客に狙いを定めている。同社はインスタグラムやティックトックでのインフルエンサーの活用や、低価格でファッションを手に入れるため次々と提供される割引コード、毎週追加される数百点の新商品を通し、若い買い物客を引きつけている。 同事業が本格的に拡大を始めたのは2012年の初めの頃で、ワシントン大学を卒業した米国生まれの許がウェディングドレスの事業を諦め、シーインサイド・ドットコム(Sheinside.com)のドメインを取得したときだ。 初期は女性の服を扱っていたため、許は2015年に会社名をシーインに改名し、海外市場に焦点を定め、国内のファッション分野の競合の買収を始めた。 最近まであまり注目されず、ジェネレーションZ世代以外にはほとんど知られていなかったシーインにとっては米国が最大の市場となったほか、同社は欧州、中東、オーストラリア、米国に専用ウェブサイトを構え、約220カ国に出荷している。 シーインは、広東省仏山からロサンゼルス近郊の倉庫に商品を運び、米市場に商品を提供している。同社は、広東州南沙やベルギー、インド、米東西海岸に物流センターを持つほか、ロサンゼルスやリエージュ、マニラ、義烏、南京に7つの顧客サービスセンターを抱えている。